休暇、突然ライブキャスターが音を鳴らした。
それは紛れもない、ギーマのライブキャスター音。
電話に出ると、そのかけて来た人物はヒウンジムで働く一人の青年だった。
「やぁ、久し振り。どうかしたのか?」
『こんにちは、ギーマさん。突然の連絡すみません。
あの…アーティさんの事で相談がありましてね…』
「アーティ?　ああ、話してご覧」
『それが……』
画面の向こうの青年は、詳細をギーマに告げた。
「そうか、分かった。知らせてくれてありがとう。すぐに行くよ」
『ありがとう御座います。それじゃ、また』
青年は小さく頭を下げ、プツリと切った。
「本当、世話のかかる子だな」
まるで、子供に言うかのような台詞を言い、ギーマは自室を出て行った。

＊＊＊
「うーーーーーーーん…………」
スケッチブックを前に、椅子に座って何やら考え込むアーティ。
鉛筆で下書きをし、消しゴムで消す作業が、何度続いているだろう。
そして、色鉛筆で塗って行く。だが。
「違う!」
頭を抱え、後ろにのけ反る。
何度も消しゴムで消して、アーティは深いため息を吐いた。
「あー、僕…こう言うのは専門外なのかな……」
服や会場のデザインは、思い浮かべばすぐに出来るのに。
こう言った本当細かな物は、苦手なのだろうか。
そう思いながら、困り果てた様に頭を掻いた。
気が付けばいつの間にか、部屋は散らかり放題。
部屋を片付けたかったが、今はそれどころじゃない。
締め切りは1週間後。それまでに出来上がらせなくては。
そう思い、鉛筆を持ち直そうとしたその時。
コンコンッ。
「どうぞ」
誰かも聞かず、アーティは無意識にその言葉を口に出していた。
そして、扉が開き、現れたのは小さな箱を持っているギーマ。
「ギーマ!」
「やぁ、アーティ。作業ははかどってるかい?」
ギーマの口ぶりで、アーティは事情を知っているのだと悟った。
小さく溜息を吐いて、天井に向かって伸びをする。
「いや、全然。デザインは思い付くんだけど、いざやってみると
何だか上手くいかないんだよねぇ。本当、こう言うのは難しいよ」
「聞いたよ。有名ブランドから、ネックレスのデザインを頼まれたんだってね」
「そう。最初は断るつもりだったんだけど…その店の店長さんが、
直接来て頭下げて来たから、断れなくて」
そう言ったアーティに、ギーマは小さな笑みを浮かべる。
だが、先程からアーティは眉間に皺を寄せているばかりだ。
「あー、どうしよう…」
無意識に出ているのか、独り言が多い。
「アーティ、根を詰め過ぎるのも良くない。プリンを買って来たんだ。
少し、休憩をしよう。疲れた時は、甘いものが一番だ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
小さな白い箱から二人分のプリンを出し、プラスチック製のスプーンを渡す。
スプーンですくい、口に運べば、とろける様な甘さが広がる。
「このプリン、美味しいね!」
「ああ、カトレアが紹介してくれたんだ。いい店を知ってるとね」
「カトレアは、詳しいんだね」
「ああ」
今まであった眉間の皺が、嘘の様に消えてしまう。
その代わり、アーティの表情には満面の幸せそうな笑みが浮かんでいた。
「嗚呼、やはり君にはそちらの方が似合う」
「え?」
「難しい表情よりも、どんな美しいアクセサリーよりも、
君にはその笑顔が、似合うよ」
「………心配、してくれたんだね。…ありがとう」
「礼には及ばないさ」
―――数カ月後、アーティがデザインしたネックレスが、
賞を取る事は、この時点で誰も知らない。

――君に似合うのは、そんな宝石じゃない、笑顔だよ。

完

後書き
……終盤のギーマさんの台詞…書いてた自分でも何が言いたいのか
分からん＾q＾つまり、アーティさんに、似合うのは満面の笑顔って言う訳で。
……伝わってねぇよ、この野郎wwww
もうこれでお許し下さい…!
それでは、ここまで付き合って下さり、誠にありがとう御座いました＾＾

△閉じる△

「アーティ」
「んう?」
ある日の昼下がり、事務作業ばかりをこなしていたアーティは
気晴らしにアトリエで絵を描いていると、ギーマが訪れた。
すぐ描き終わるから待っていて、とギーマに伝え、黙々
絵を描いていた。そんな中、その様子を見ていたギーマが
立ち上がり、アーティを背後から抱き締める。
「?　どうしたの、ギーマ?」
「君の髪はフワフワしていて、気持ちが良いね」
「僕に比べて、ギーマの髪はツンツンしてるね」
アーティの言葉に、ギーマは小さな苦笑をする。
そして、ギーマはアーティの髪に頬ずりをした。
「エルフーンみたいだ」
「アハハ、気に入って貰えて良かったよ。ほら、ギーマ離れてよ。
絵描けないから」
「嫌だね。だったら、このまま描いてご覧?」
「全く……。君は本当、困った人だね」
暖かい陽が射し込む、穏やかな快晴の日の出来事……。

完

後書き
アーティさんの髪の毛、もっふんしたい!
私、ぬいぐるみとか大好きで、集めてるんです。
癒される為もあるけど、第一の理由はもっふんする為ですね!
それでは、ここまで付き合って下さり、ありがとう御座いました!!

△閉じる△

「アーティ、何を読んでいるんだい?」
「んうん?　ああ、これね。
幼い頃、僕が憧れていた画家さんの絵だよぉ。
もう、死んでしまったけれどね」
久々に休暇が重なり合い、ギーマはアーティの自室で
ティータイムを楽しんでいた。
部屋に漂う紅茶の香りが、上品な空間を生み出していた。
「ギーマも見る?　この人は、海と空の風景を描く人なんだけど」
「ああ、見せて貰おうか」
アーティから本を受け取り、ギーマは本をペラペラと捲り出す。
その本には、美しい風景が描かれていた。
確かに、この今は亡き画家の絵は、どれも素晴らしい。
けれども、これ以上に美しい絵を描く画家が、今ここにいる。
「ああ、どれも美しいな」
「そうでしょ?　この人がきっかけで、僕は絵を描き始めたんだよ」
「……そうか。でも、私はこの人より、美しい絵を描く画家を知っている」
そのギーマの言葉に、アーティは不思議そうに首を傾げる。
「へぇ、誰なの?」
「今、ここにいるじゃないか」
「え?　………えええ!?　僕!?」
辺りを見回し、誰もいない事を確かめる。
そして、ギーマに視線を移すと彼の目は、まっすぐとアーティを見詰めていた。
アーティは、漸くその画家の正体を知る。
「フフ、そうだよ。私達の他に、誰がいるのさ」
「で、でも、僕の絵はまだ未熟だし、その人には及ばないよ…」
「アーティ。君は、もっと自信を持っていいと思うよ?」
俯かせていた顔を、アーティは弾かれた様に上げ、ギーマを見る。
ギーマは、穏やかに笑っていた。
「あ……。……がっ、頑張る!」
「うん、それで宜しい」
自分の絵を卑下するより、自分や、自分の描いた絵に、
自信を持った方がいいだろう?
まだ、落ち込むよりは、ね。

どんな画家よりも、君の描く絵が、世界で一番美しい。

完

後書き
友人に送った、ギマアティ改。
友人に送ったのは、もうちょっと違う。
今ブログに書くと、結構な文が思い付く…。
友人よ、すまない……!!
それでは、ここまで付き合って下さり、ありがとう御座いました。

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