きっと、私はNの事が好きだったのかもしれない。
相手は敵だと知っていても、私は明らかに、彼に恋心を抱いていた。
でも、それに気が付いたのは、Nと別れたずっと後。
あれから私は、彼に会う事なく、いつもと変わらない日常を送っている。
普通に旅をして、普通にバトルして、普通に、普通の何の変哲もない日常を。
アデクさんに、挑戦を待っていると言われたけれど、行く気になれなかった。
チャンピオンの間、あの場所は沢山の事を思い出してしまうから。
「今日も、頑張ろう。ダイケンキ」
ミジュマルから、ずっと一緒に歩んでくれたパートナー。
ダイケンキは、嬉しそうに頬をすり寄せて来た。
これからも、私はリーグに挑戦するつもりはない。
思い出したくないから、それでも、忘れたくはない。
矛盾、してるわよね。
「N、私は信じてる」
あの時、貴方は私に、“サヨナラ”と告げたけれど、私はそれを認めていない。
永遠の別れだなんて、私は思いたくない。
「貴方とまた、会えると言う事」
信じてる、信じてるから。また、いつかこの空の下で、会えると言う事。
だから、私は願う。
色褪せないで、その時まで。
色褪せないで、この記憶。

完

△閉じる△