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King or Queen?
2010/06/26 22:48:36
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ポケモンリーグチャンピオン。
それが彼女。名は、シロナ。
黒衣と金色の長い髪を靡かせて、戦う姿も凛々しく美しい。
そんな彼女に、私は叶う事の無い恋心を寄せていた。
最初は、彼女の強さに憧れていただけだった。
でも、いつしかその憧れは、恋へと変わっていた。
「今日もお疲れ様、ゴヨウ」
「あ……ええ、チャンピオンもお疲れ様です」
「? ゴヨウ、どうしたの? 珍しくボーッとして…」
「いいえ、少々考え事を」
そう、貴女と私の立場を。
町の者達は、貴女の事を「王」、「女王」等と言う。
王か女王か、どちらなのだろう。
そんな事を、考えていた。手元にある、本に珍しく集中出来ずに。
私は四天王、貴女はトレーナーの王であり女王。
主君と従者。……例えるとするなら、そんな風になるのかもしれない。
そんな恋なんて、叶う筈がありませんね。
「チャンピオン」
「? 何かしら」
「……貴女は、ご自分の事をどう思っていますか?」
「……どう…って?」
「…町の者達は、貴女を「王」や「女王」と言います」
「そうねぇ…。……王でも無ければ、女王でも無い。
ただの神話とポケモンを愛するポケモントレーナーよ」
「――!!」
王、そして女王である事を否定し、ポケモントレーナーと言い切った彼女は、優しく笑っていた。
美しい、眩しい程の笑みを浮かべて。
貴女は、とても不思議な方です。
今、私もやっと分かりました。貴女が、誰なのかを。
王、女王、チャンピオン。全て、違う。
貴女は。
「王女の様です」
「? 何か言った?」
「いいえ、独り言です」
凛々しく美しく、強く優しく。それはまるで、プリンセス。
嗚呼、私が貴女の、プリンスになれたらいいのに。
そんな事を考えていると、手元から本が落ちた。
バサッ、と床に音を立てて落ちる本。
白く細い指先がその本を手に取り、私に差し出して来る。
「少し休んだら? 本も読まず、次のバトルの事も考えず、無心になるの。
結構いいものよ。ポケモンの技で言うなら…瞑想ね。オススメするわ」
「…はい、お気遣いありがとう御座います。シロナさん」
時折、彼女の名前を呼ぶ。
本を受け取り、彼女は部屋を出て行った。
今日も、彼女は古い遺跡を巡るのだろう。
王か女王か、違う。その間を取って、王女と王子。
でも、恐らくその王子に私は、なれないのでしょうね。
叶う事の無い恋。
無心になってみろと言われても、それは無理な事。
私の心は、貴女の事で溢れそうだ。
完